2009年 日本穀物科学研究会

第137回例会総会

2009年2月7日(土)12:30よりエコール辻大阪(大阪市阿倍野区松崎町2-2-14)にて第137回例会ならびに総会を開催いたしました。
本年度の日本穀物科学研究会学会賞 光永俊郎氏(近畿大学名誉教授) 奨励賞 唐漢軍氏(丸中音株式会社 代表取締役)が受賞されました。
 
テーマ  
 『穀類の製粉技術および製パン技術における最近の動向』

講演  製パンにおける国内産小麦の機能性の追求
 (国内産小麦によるパン混捏・焼成のデモンストレーションと試食を含む)
                         エコール辻 大阪 辻製パンマスターカレッジ 教授 吉野精一氏

 従来の国内産パン用小麦の多くはそもそも遺伝的には麺用の中力粉を各製粉メーカーの工夫をもとに
1)パンの風味の改善 2)パンの食感の改善等を目的として強力粉,フランスパン専用粉等に一部ブレンド用として使用されてきた。また,エンドユーザーのベーカリーにおいても,ごく一部のリテイルベーカリーが国内産,無農薬,オーガニックおよび安全性へのこだわりのもとに国内産パン用小麦粉を製パン原料の一部としてきた。
 しかし,ここ数年は生産者並びに各研究機関の開発が進み,国内産パン用小麦の品種改良と作付けが改善された結果,国内産小麦粉の製パン製が劇的に向上した。すでに一部のリテイルベーカリーでは国内産単一麦種で仕込んだセミハード系のパンなどが商品として陳列台に並んでいる。
 さらに2008年12月6日に行われた本会の第136回例会において講演された北海道農業研究センター・パン用小麦研究チーム長,山内宏昭博士の「パン用小麦を中心とした国産小麦生産の現状と各種用途」の発表に続き,今後,国内産パン用小麦が製パン業界でも内需拡大されると考えられるこの時期に「製パンにおける国内産小麦の機能性の追及」を今回のベーカリーシンポジウムにおいて発表できることは幸いと言えよう。
 本講演,講習会では北海道 前田農産,前田茂雄氏の協賛を得て,2008年度産の代表育種の春よ恋,キタノカオリ,ホクシンの3種類を使用して,一般的な中種法による各食パンと菓子パンにその機能性を求めるものである。具体的にはサンプル提供と試食による各パンの判定。また,実演によるそれぞれのパンに使用する小麦粉の特性と製パン上の技術的なポイントを解説する。

吉野 精一 氏
前田 茂男 氏
  パン生地の種類,製法による最適なイーストの選択と使い方
           株式会社カネカ 食品事業本部 食品事業部 製品企画グループ幹部職 小野昌志氏
 古代エジプトに始まり,ヨーロッパ各国で発展した発酵パンはその発酵の原理が明らかではなかった。1857年フランスの生化学者パスツールが「イーストが糖をアルコールと二酸化炭素に分解する」ことを立証し,初めてその発酵のなぞを解いた。
 一方日本では明冶7年(1874年)東京銀座木村屋で誕生したアンパンは清酒用の麹と酒母から作られた酒種で生地を発行させていた。当時酒種などのパン種は勘が頼りの方法であり,だれでも広くイーストを使用できるようにイーストの研究が行われた。第一次大戦後,質の良いイーストを効率よく大量に得ることの出来る製造法が確立され,パンの品質は飛躍的に向上した。
 現在でも主流となっている中種製法がアメリカから導入され定着する一方で,お客様へ焼きたてのパンをタイムリーに供給することの可能な冷凍生地製法が確立され,普及した。またペストリー製品の拡大に伴い製造での発酵安定性が求められるなど,種々の製パン法の確立に伴いそれに適した品質のイーストの開発が行われてきた。
 本講演においては,イーストの基本的な構造,機能など基礎知識について説明するとともに,各種製法に求められるイーストの性能とそれに対応したイーストについて詳細に紹介する。
 小野 昌志 氏 
   ここ最近の新機軸の小麦粉製品
                              日清製粉株式会社 研究開発本部 石神 真二 氏
 従来より小麦粉は蛋白質量に応じて,その量が多いものから「強力粉」「準強力粉」「中力粉」「薄力粉」に分類され,その加工用としては順に「パン用」「中華麺用」「麺用」「菓子用」に区分されてきた。また小麦粉のの価格取引では,会分量が重視され,その含有量が少なく色の白い小麦粉から,「1等粉」「2等粉」「3等粉」などに分類されている。
 小麦粉蛋白質の量の違いは,小麦原料そのものに由来し,一般に日本国内ではカナダ・アメリカの強力小麦,オーストラリアの普通小麦,アメリカの軟質小麦が使用されている。またマカロニ・スパゲティなどのパスタ類はデューラム小麦が用いられ,一般には粒度の粗いセモリナ量の約10%を占める。そのほとんどが普通小麦で,麺用として利用sれることが多いが,近年パン用などの品種も出回りつつある。
 しかしながらここ最近10年くらいの動きとして,小麦粉二次加工品の多様化に伴い,このような従来の枠組みにとらわれることのない小麦粉製品が作られるようになってきた。特に
 @ フランス小麦や北海道小麦など,原料原産地にこだわりその特徴を生かしたもの
 A デューラム小麦のパン用粉への応用など,原料小麦の意外な特長を引き出したもの
 B 微粉砕された全粒粉など,健康志向を高めたもの
などが数多く上市され,注目を集め始めている。
 今回はこうした新しい切り口で作られた小麦粉製品について具体的に紹介し,その特長について説明する。
 石神 真二 氏
総 会


 懇親会
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日本穀物科学研究会事務局 林 孝治(Tel 06−6731−0095、Fax 06−6731−0094
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