1.はじめに
60kg以下に減少している米消費量(国民一人当たり年間)を拡大するために,「安心・安全・美味・健康」の消費者ニーズに応える米商品の開発が求められている。ここでコーティング米等を含めた各種無洗米の特徴について紹介する。
2.無洗米
一般に普通白米は,炊飯前に約4回程度水洗いし,白米重量の約2%前後が洗い流されてしまう。無洗米は単に炊飯を簡便化・利便化してご飯の食味を良好にするためだけでなく,米に含まれるビタミンやミネラル等の微量栄養素の流失を少なくし,洗米排水による環境汚染を防止することにも重要な役割を果たしている。
無洗米を製造する無洗化処理装置は,精米機では完全に除去できない白米表面の糊粉層を完全に除去し,水分16.0%以下の白米に仕上げるもので,乾式と湿式及び特殊方式がある。乾式無洗米は,白米表面に残留している糊粉層を完全に除去できないため,炊飯前に1〜2回水洗いする必要がある。また,湿式無洗米は,残留糊粉層を完全に除去できるが,栄養分の流出と除糠水を処理するための排水処理設備が必要とする等の課題がある。
乾式と湿式の課題を解決したのは図1 に示す特殊無洗 化処理方式で,白米に約5%
の霧状水分を噴霧しながら糊粉層を湿潤させ,白米重量の約1/2のタピオカ(80〜100℃)を混入して軟化された糠類を吸着・除去する方法である。本方式で得られる無洗米はTWRと称し,普通白米 と比べ,炊飯後の時間経過によるご飯の食味低下が少ないことがわかった。
図1 無洗米(TWR)の加工フロー図
3.新加工3.新加工無洗米(コーティング米)
コーティング米は無洗米に増粘多糖類を水溶液とし,これに機能性成分(FeとビタミンE)を加え,瞬時に噴霧攪拌して仕上げるもので,通常の無洗米と違って加工米として販売されている。また,新加工無洗米は,精米(砕米)と無洗米処理糠を用いた糖化液を,無洗米に対してある一定量の割合で高速噴霧攪拌しながら被膜加工して水分上昇分を高速乾燥仕上げるものである。米本来の栄養成分として,オリザノール,イノシトール,食物繊維等が付加されている。新加工無洗米は洗わないで炊飯することができ,ご飯として食した場合,加工前の米と遜色がない食味になっている。
4.無洗発芽米
弊社は穀類にギャバを自然富化する微量加水法を開発し,発芽玄米並みの機能性成分を含有し,食味・食感に優れる無洗発芽米の製法を確立した。本製法によって従来できなかった発芽玄米の搗精加工が可能となり,胚芽米や精白米の食味と食感が得られる。また,表面付着糠を固着させることにより精米歩留りが1%以上向上し,同時に洗米が不要となり,加工業者の利益向上につながる。
5.おわりに
食の多様化に伴う栄養のアンバランスによる生活習慣病が増加している中,米食を中心とした「日本型食生活」が見直され,これからの米商品には単に栄養とおいしさのような一次・二次機能だけでなく,生活習慣病に予防効果のある三次機能も求められると思われる。
参考文献
1.金本・柴田:新しい無洗米処理装置(NTWP)の開発,日本食生活学会誌,13(1),1-7,2002.
2.(社)日本精米工業会:新加工無洗米の製造技術の開発について,精米工業,No.212,44-49,2005.
3.佐竹:高機能性米の調製加工技術の開発,美味技術研究会選書,No.4,62-83,2005.
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